そろそろ炊飯器がもう一つ欲しくなったりしている。
じーさんに相談してからそのうちどこかで安いものを・・・と思ったら

「士郎、今日も早いね」

本人が顔を覗かせる。

「・・・おはよう」

いつものように声を掛ける。
一日も途絶えることのなかった日常。
俺が高校生になっても、続く日常。

「あ、そうだ今日はご飯とパンどっちがいい?」

昨日の買い物の時にバケットがちょうど焼き立てだったので買っていた。
朝食にするか、何かはさんで今日の昼ご飯にしようと思っていたんだが、
一応この家の主だ。お伺いは立てねば。

「イリヤちゃんはパンの方が好きだろうから、僕も今日はパンがいい」

「ん。判った」

 


「え、シロウ。今日パンなの?」

「うん。バケットのオープンサンド」

「え、ヤダ。私ご飯がよかったな」

「・・・・・・・・・・・イリヤ・・・・・・・・・・」

じーさんは目に見えて落ち込んでいる。

「ん?形が違うのがある」

「ああ、それは・・・」

「この歪な形のは嫌ねなんとなく・・・こっち食べる」

歪な形のサンドの製作者本人は
もう見る影も無く落ち込んでいて・・・

「じ、じーさん!俺じーさんの作ったこっちの方がいいぞ!?
 ・・・うんおいしい!イリヤ勿体無いなーこっちの方が断然!おいしいのに!」

ふんやっぱりそうだったんだ、という目をこっちに向けて

黙黙黙・・・と
なんとも重苦しい朝の風景だ。

思うに。
イリヤもきっとじーさんのことは嫌いじゃないんだ。
でも、ほら。思春期特有のアレとか
血が繋がってない俺の存在とかあれやこれやが
素直になれない要因で・・・

「シロウ!」

元気で無邪気な声で我に返る。

「ん?」

「私シロウが学校に行っている間にお洗濯してるね!」

「本当か?頼んでもいいか?」

「任せて!お洗濯の仕方はきちんと教えてもらったもの!」

ポケットの中から紙を取り出し、
一つ一つ読み上げていく。

水の量。洗剤の入れ方。皺の伸ばし方。
何気なく教えていたことを
忘れないように、いつか自分が役に立てるように、
きちんとメモしているその細やかな神経に感動する。

「一番重要なことが・・・えっと・・・」

「うんうん・・・」

「私とキリツグの洗濯は別にすること!よね!」

気がついたら
じーさんの姿は家のどこにもなくて。
いい加減にしろよ、とたしなめてから学校へ向かう。

 


ああ、父親と娘は相容れない生き物なのか・・・

 

 

「ランサー。頼んでいた仕事は終えてくれましたか?」

ナフキンで口を拭きながら
カレンがランサーに尋ねる。

「仕事?何を頼んだ?」

「言峰綺礼。あなたには関係のないことです」

すげえ。ぴしゃりと言い放った。

「ああ。今日終わった。
 しかし・・・悪りぃな。頼まれたサイズより少し小さくなってしまった」

「まぁいいでしょう。雨風が凌げればそれでいいのですから」

「じゃあ、今日中に新しい納屋にモノを移すのか?」

ランサーが親指で指差した窓の外には
真新しい物置・・・イ●バ風の・・・が
朝日を受けててかてかと輝いている。

「ええお願いします。
 ・・・戸が狭いですね。ベッドを入れるのが難しそうですが
 まあそこは創意工夫の上で」

「ベッド?地下倉庫の要らないものを移動させるんじゃ?」

「あら。・・・地下倉庫、だなんて一度も言っていませんよ。
 要らないものとは言いましたけど」

「・・・・・・・・・・まさか」

「あら可愛い。元から肌の黒いアンリが青くなっちゃって
 ますます男前が上がって(ぽっ)

 この教会の一番要らないものは・・・そこのモジャ」

「「モジャーーーーーーーーーー!!」」

「今日からは貴方にはイナ・・・別荘で過ごしていただきます。
 娘からの・・・初めてで最後の親孝行と思ってくださいな・・・・」

「今イ●バ物置と言い掛けたなこの娘・・・・!」

「地下の年代もののワインは今回の労働の報酬として
 ランサーに差し上げましょう。

 ・・・教会に貴方が着任した年や
 聖杯戦争の年のワインもあったと記憶していますが
 まぁそんなことは瑣末なことでしょう」

「お・・・俺!今日は洗濯頼まれてやろうかな!!
 洗濯機の使い方を教えてくれ!カレン!な!?」

「あら。アンリマユは偉いのね。食事を供給された分は労働で返してくれて。
 どこぞの腐れモジャは労働もせず偉そうにするばかりで・・・
 アンリにはお礼に後でXXXして****して差し上げます」

「この腐れ聖女が・・・人目にさらすのも恥ずかしい出来だな」

「腐った血が私の血の半分を占めているって悲しい事実ね・・・
 さあアンリ。洗濯の基本にして奥義にしてお約束を教えましょうね。

 それは、この菜箸」

「菜箸?」

「この菜箸で手で掴みたくないものをつまんで隔離して・・・・・」

「わーーー!うわーーーー!!向こう行こう!あっち行って話そう!な!?」

 

 

 

「衛宮切嗣か・・・嫌な顔を見た」

「・・・好きに言うといいよ。僕はもう疲れた」

「・・・同感だ」

正午近い公園には人気が無く、
幼児や赤ん坊もひとまず昼ごはんらしい。

そんな公園に、・・・そんな公園でなくても
大のオッサン二人がぶらんこに座る姿は異様だ。

「一つ、今日気がついた真理があるんだ」

「ほう・・・何もかも知ったように達観して
 このごろはのらりくらりと生きているお前にも
 初めて得るものがあるのか。
 ・・・言ってみろ。生まれ出たその真理とやらを祝福しよう」

「・・・・・・・いや。やっぱり心の中に留めておこうか。
 お前に言うのが嫌とかではなく、
 口にしたらそれを認めてしまいそうになるからね」

「・・・認めたくないこと、か。
 私も今それに直面して臓物が煮えそうだ」

「はは・・・僕は逆。心臓が氷漬け」

「言ってしまえばお互いに楽になるのかもしれないな」

「言ってみる?一斉に」

「・・・みるか。偶には私も」

「楽になりたい・・・か?」

「違いない」

二人、息を吸って

同時にだした言葉は

 

「「実の娘より義理の息子の方がよっぽどかわいいんだが!!!!!」」

 

 


というわけでホロウ4日間連続更新もこれにて終了。
何人見てくださっているか判りかねますが
ありがとうございます。

ラストは「言峰と切嗣の存在するホロウ」でした。
いや・・・イフの世界だしこれくらいはやってほしかったな・・・
ホロウの物足りない部分でしたので。

カレンの暴言がすらすらと出てくるのは何故なんでしょうね?
自分でもびっくりよ。

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