体育の授業は選択制で
 一成は決まってその内容を避けていたので
 たまにはいいだろ、と思った。


 弁当のときに、
 ライダーに貰ったタダ券を見せ、
 今度一緒に行こう、と言ったとき

 

 奴の箸は動きを止めていた。

 

今日はよく晴れた休日で。
空気も乾いていてペンキの乾きが早い。
頼まれた仕事を終え、生徒会室へ向かうと

「衛宮。終わった。・・・行くか」

一成がプリントをまとめながら声をかける。


普段のバッグとは別に、サンドバッグの様な形のプールバッグ。
足音に合わせてぼすぼすと音を立てる。

「一成?」

「ん?」

「その・・・怒っているか?」

「どうして?」

「今日の朝からずっとなんだか不機嫌だし」

「・・・別に」

「・・・泳げないのか?」

「違う。・・・零観兄と宗一郎兄が居て、そんな醜態が許されるとでも?」

「・・・そっか・・・」

確かにあの二人が「兄」に居る以上
努力もせずに「できない」なんて言えないな。 
 
でも・・・そうだとしたら・・・?

着いたのは、・・・何回口にしても恥ずかしい施設

「わくわくざぶーん」


タダ券を見せてゲートをくぐり、
だだ広い更衣室へ向かう。
がらんとした中に
無機質なロッカーが無数にならび、

不謹慎だが、鬼ごっこかかくれんぼにでも使えそうだ。

適当に入り口に近いところのロッカーのドアを開け、荷物を入れる。

「一成、隣使えよ」

と声を掛けるが・・

居ない。

「一成?おい一成?」

秋も深まってきたからか、
午後から泳ごうという男は少ないのか、
がらんとした中に声が響く。

うろうろと、所在無く歩き回り
独特の黒髪を捜す。

・・・どこ行ったんだあいつ。

一成は、俺とは全く逆側。
プール側に陣取っていた。

「びっくりした。・・・横いいか?」

一成の横のロッカーに俺もバッグを置く。

「・・・・・・・・・・・・駄目」


それは、友人を数年、
「そういう関係」を数ヶ月続けている上で
初めての拒絶。

「え・・・・・・何でさ」

「・・・・・・・・・・・・なんでもない。衛宮はそこで着替えるといい」

一成は荷物を持ったまま移動を始める。

「一成!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「理由を教えてくれないとなんともならないし、
 何か悪いところがあるのなら謝る。

 だから、どうして避けるのか教えて欲しいんだ」

「・・・・・・・・・・・・・・・・別に衛宮は悪くないんだ。
 嫌なことを先に伸ばしたいだけの、ただの我侭」

「嫌なこと?」

「・・・・・・・・・・ずかしいとは思わなかった!」

「え?」

「衛宮の前で、上半身とはいえ・・・素肌をさらすのが・・・
 昨日・・・準備していたら・・・途端に恥ずかしくなって・・・

 並んで着替えるとか・・・そんなの絶対無理で・・・
 でも水着にならずにプールで遊ぶだなんてそんなのは無理に決まって・・・」

顔は下を向いてしまって見えないけれど
ああ、きっと爆発しそうに紅い顔をしているんだと思う。

「悪い」

「謝るな」

「じゃあ、可愛い」

下を向いた頭ごと
ぎゅっと胸に抱き寄せる。

「・・・何するんだ衛宮!」

「こんなに一成が照れてる姿が見れたから
 今日はもうヴェルデ行って甘いものでも食べて帰ろう?」

「な・・・なな・・・」

「心の準備が出来たらいつでも声を掛けてくれ!
 そのときは一緒に泳ごう?な?」

いつまでも待ってやるから、と
小さな声で囁いたら

・・・精進する、と
それから

本当にいつまでも待っててくれるか?と
今度は俺の目をきちんと見据えて一成は返事を返す。

 

 


家に帰った俺達に

「どうして更衣室だけで帰ってくるのですか!?」と
ライダーの怒号が飛ぶのもまたお約束で。

幸せそうに大判焼きをほおばる一成には
そんなこと関係ないようだった。

 

 

 

 

三日目は少しイロモノで。
シロイセでわくわくざぶーんネタでした。
更衣室でいちゃこらするのは
他の「ヒロイン」には真似できない特権だと思います。
あと一成といえば赤面。これは外せない。

一成ルートなる反則ネタを繰り出している当サイトなので
この小説も微妙に一成ルート準拠。
券の入手元がライダーなのはそのためです。
一成ルート準拠なので。
この次の話はアレですよ。
バスタオルを取るの取らないので大騒ぎ(どこまで似てるのこの双子)

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