ツンツクテンテン・・・ツクツクッテンテン・・・ドンドン。

どうも。一席の間のお付き合いでございます。

えー、昔から言いますことには
「茄子の花と親の言葉には万に一つも無駄がない。」

昔の人はよく植物を観察していたんですな。
茄子は花をつけると
そこに必ず実をつける。

そこを親の話、と持ってくるのが
この格言の偉いとこ。

だから、親はドラ息子に向かって言うんですな。

「このオタンコナス!」と。

そして引けなくなった息子は

「うるさいよ!親はなくても子は育つ」 と返す。
こうして堂々巡りになるのが親子喧嘩、と。

 


「んでさ、どうして駄目だか知りたいわけ。」 

古着屋「ドラゴンソーダ」のレジに陣取って
くだをまく・・・いえいえ尋ねごとをしているのが
虎児。またの名を林家亭小虎。

やくざと噺家を両立させようと、
そしていつかはカタギに戻り
みんなを沢山笑わせるのが夢、と語る純な奴。

「何が駄目って・・・全部?」

冷めた目で返すのがこの店の主、竜二。
落語の才能が十分にありながら噺家を辞め
今は駆け出しのデザイナー。
落語なんかにたよらなくったって
一人前になってやる、というのが夢の これまた純な奴。

つまりはふたり揃って「タイガーアンドドラゴン」

・・・・どんなドラマだったか、思い出してくれましたか?

「だからよ、面白い噺なんて聞いたからには
 やってみなくちゃ損ってもんだろぅが?

 それをあんのジャンプ亭ジャンプのヤロウに
 『あなた、それは無謀というより他なりませんよ?』
 なんて言われて

 で、竜二にもこう言われて」

「駄目ってことは、駄目なんじゃない?」

品出しをしながら従業員のリサが冷ややかにツッコミを入れる。


「だから、俺が頑張ってもできないってのはどうして!!」

「まあ待てって。『今には』向かないだけだから」

「今って・・・あとレベルがいくつ上がったら!!」

「そうじゃなくって・・・落ち着けよ!
 茄子娘は、冬の寄席でする噺じゃない」

「え?そんなのあるんですか店長」

「オオアリ。
 怪談は、原則として夏の寄席だけだし
 酒でも熱燗が出てくるのは冬の寄席だけ」

「だから怪談じゃないんだろ?その茄子なんとかは」

「だから・・・茄子だから駄目なんだよ」

「?」

「茄子は夏の野菜だろ。
 んで、作品中には雷やら夏祭りやら出てくる。
 今の季節には向かないんだ。

 ついでをいうと、女の艶を出さなければならない噺だから
 お前にはいろいろ難しいんだろ」

「いや・・・マーボーナスなんて一年中食ってたから・・・
 夏の野菜だったんだ・・・」

噺家がこんなんでどうするんだ、
せめて季節には敏感になれよ、と竜二は嘆息する。
実際虎児がいい噺家になれなくっても
彼は困りはしないのに。

なんだかんだ言って、スキなんだなー。
恋愛求道者のリサは心の中でニヤニヤと笑う。

「テンチョー。そんで茄子と娘って何の関係があるんですか?」

「お、おう。俺も最後までこの噺聞いてないんだ。ちょっくら教えろ」

  
落語は嫌いなはずなのに
教えてなんて言われたらギアが入るのが竜二。

「昔、な。ある山奥の小さな村に若く徳の高いお坊さんが居たんだ」

二人ともずずい、と傍に寄ってくる。
竜二の視線はもう、噺の中に入ってしまっている。

「徳が高い、というからには
 無論女遊びも無益な殺生もしない。

 小坊主を一人だけ取って
 裏の畑で野菜を育てながら仏に身を尽くす毎日。

 特にかわいがっていたのが茄子で、
 毎日花が咲くたびに大喜び。
 『立派な実を付けておくれ』と話しかけていたんだ」

「「・・・・・・変態?」」

「徳が高い、の!」

落語の世界に出てくる「いいひと」「よく出来る人」は
概して変人が多い。

「ある夏祭りの日。
 小坊主が祭りに行きたいというから
 泊まっておいで楽しんでおいでと送り出し
 
 一人でセミの声を楽しんでいたら

 見たこともない女の人が訪ねてきたんだ」

「幽霊?」

リサがすっとんきょうな声を上げる。

「いいや、ここから始まるラブロマンス・・・」

「虎さん。徳の高いお坊さんに限ってそんな・・・」

「いや、お前正解」

「マジで?」

「その女の人は、紫色の着物に白い手足の超美人。
 雨宿りさせてもらいに参りました、と言いだした。

 雨も降ってないのにおかしいと思ったら
 その途端雨がザーっと降りだした。

 とりあえずお堂に上げてお茶を出したら
 その彼女は
 『私は茄子です。恩返しをしに参りました』って。

 ご飯を作ってくれ、肩もみもかいがいしく。

 そして、そのお坊さんが眠るときに
 団扇で扇いで差し上げます、って
 寝屋について来た」

「ちょ・・・それって!!」

「迫る女の典型的パターンだな」

「全くだ。
 しかし女性経験のない坊さんはそれが分からない。

 二人で寝屋に入って
 のんびり過ごしていたらば

 ・・・・・・まあ、朝起きて
 坊さんはこの上ない自己嫌悪」

「まじですか店長!」

「ひゅうー。ヤる〜」

「仮にも噺家ならそんな下品なアオリしないの。

 そのあと坊さんは
 アレは全て
 未熟な自分が招いた妄想だ。
 そんな妄想を抱くのは
 修行が足りない証拠だ って
 何年間も、修行の旅に出たんだ。」

「結局、逃げですよね」

「リサちゃん。厳しいこと言わないの」

「んで、それで終わりか?」

「真逆。

 数年の後、彼は村に帰ってきた。
 変わらない村。変わらない我が寺。

 そこで彼は
 可愛がっていた畑に行くことにしたんだ。

 覆い茂る草。

 そしてそこに居たのは・・・・!?」

「「居たのは!?」」

「一人の幼女だったんだ」

「なんで?」

「まあ聞くといい。
 なんとその幼女、
 坊さんを見るや否や口にした言葉は『お父様』」

「なんなんでそんな」

「その子がいうには
 
 私はあのときの茄子の子供です。
 あの夏祭りの日
 お父様があの茄子に『いたした』から
 こうやって、私という子供が生まれてしまいました と。」

「はぁぁぁぁぁ!!!??」

「え?アレは妄想じゃなくって現実で
 しかも子供までできちゃったの?」

「避妊しろよ!!」

「って驚きどころはそこか!!」

「それで最後の締めに入る。

 お坊さんはきわめて平静を装い
 『じゃあ、お前さんの母親はあの茄子だったんだな。
  お前どうやって今まで育ってきたんだ?』と聞いてみた。

 そこで幼女は答えるんだ。
 『親はナスでも 子は育つ』ってね」
 
「・・・・・で?」

「いや、おしまい」

「単なる、シャレですか店長」

「うん。シャレ」

「だからさ、そんなに寄席でもしないもの・・・」

虎児の方を向き直るが
彼の目はキラキラ。

「おんもしれーっ!!」

「やっぱり、お前にとって『面白くない話』はないんだよな・・・」

「いや、茄子とヤって子供ができるんだ」

「そこ!?」

「いや・・・そうだったら・・・」

ひょい。

「男とでもなんとかなったりして」

「はぁ!?」

「ちょっと虎さん?」

「ゴメン。オタクの店長かりるわ」

「待て俺の意思は無視か!!」

 

その約半年後。

「いやあ、そろそろ腹が目立ってくるころなんですが。
 おかしいですよね・・・」

寄席が荒れた。

「こりゃ、ナスすべなしだわ」

常連の蕎麦屋の親父のつぶやきは

「やめろ小虎!!」
「師匠倒れないで!!」
「どーんどーんどーん!!」

喧騒に紛れて消えていった。


文月亭みさきの
「茄子娘」でございました。

 

 

 

 

 

 

 

キリリク「タイガーアンドドラゴン」でした。
時間がかかりましたね・・・マリン様ごめんなさい・・・。

正月の時期だったら
「タイガーアンドドラゴン」の再放送があるかな、とか
落語に親しみがあるかな、なんて思って
そのときまでにはなんとかしたかったのですが・・・。(ごめんなさーい) 

虎竜風味、というリクでしたので
それを取り入れつつ・・・、にしてみました。
あとは、素人落語もやっていることですし
落語の噺も取り入れて・・・
「茄子娘」は結構好きな部類の噺です。
茄子の妖精がお礼に来てくれて
間違いを犯したせいで子供・・・だなんて
その想像力に脱帽です。

また落語のネタはやりたいなあ。

それではリクエスト、ありがとうございました!!

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